本格派から芽生えた社会派の花―『容疑者Xの献身』を論じて

 2022-01-19 11:01

目         次

一 はじめに 1

二 作品から見た本格派推理小説の特徴 2

三 作品から見た社会派推理小説の特徴 5

四 終わりに 7

致 谢 12

本格派から芽生えた社会派の花

―『容疑者Xの献身』を論じて

田雪 20121322005

要旨:『容疑者Xの献身』は東野圭吾の代表作の一つで、日本では第六回本格ミステリ大賞、第134回直木賞三十五賞の受賞作になった小説である。小論はまず本格派推理小説と社会派推理小説の特徴をまとめ、そして原作を分析した上で、この小説にはそれぞれの特徴を同時に持っていて、本格派推理小説でありながら、社会派推理小説でもあることを論証してみたいと思う。

キーワード:特徴;探偵;論理;動機;現実性

一 はじめに

高校の時、本屋である推理小説を読み切って、日本の推理小説に興味を持つようになった。一番好きなのは『容疑者Xの献身』である。2008年実写映画が日本で公開された。その映画を見た後、ますますこの小説を気に入るようになった。原作に興味津々なので、原作を分析することで、この小説は本格派小説でありながら、社会派推理小説でもあることを論証してみたいと思う。

中国では、東野圭吾の作品に対しての研究はほぼ女性キャラに関する内容なので、社会派推理小説要素に対する研究は比較的に少ないようである。小説の女性キャラ花岡靖子に対して、黄麗瓊は「花岡靖子は強さと弱さの矛盾体だと言えるだろう。」、「犯人ではあっても、別の角度から見れば、生活の実の被害者でもあるだろう。」と考えている。一方、社会性の特徴に関しては、倪捷の意見は「東野圭吾の社会派におけるリアリティは作品の最も重要な特徴だと思う。推理小説の形で、東野は現代社会に存在している各種の社会問題を指摘し、読者の人々に直面させるている」ということである。

日本の評論界では、小説が本格派推理小説のジャンルに入れるかどうかという論争があった。第134回直木賞選考委員の五木寛之は「推理小説として、殆ど非のうちどころのない秀作である。」と称賛している一方、「犯行を偽装するために殺されたホームレスの描きかたと、男を引き付ける何を持った靖子という女のオーラが伝わってないのと、その二点は私にとっては不満だった。」という評言を出した。

『容疑者Xの献身』は本格派推理小説で、完成度の高い社会派推理小説でもあることを論証するために、小論はまずそれぞれ本格派と社会派推理小説の特徴をまとめ、そして原作の中で相応しい内容を見出して分析したいと思う。こうすることで、小説はなぜ成功したかもわかるであろう。

二 作品から見た本格派推理小説の特徴

 2006年、『容疑者Xの献身』は第134回直木賞と第六回本格ミステリ大賞の受賞作になった。その後、中国でも「東野ブーム」が巻き起こった。それにもかかわらず、小説を巡って、本物の本格推理小説であるかどうかという論争が日本の評論界であった。それに対して、東野は「本格であるか否かは、読者一人一人が判断することである。」と答えた。この小説は本格推理小説であることを小論はまず論証してみたいと思う。

1 本格派推理小説の特徴

本格推理小説はまた本格探偵小説、本格ミステリ小説だと言う。1926年、甲賀三郎が初めて論理的推理を中心とする小説を「本格探偵小説」と呼び始めた。その後、「ミステリ」という外来語が日本に伝わって、人々がすぐにこの言葉を受け止めたのである。以来、この言葉が定まっていて、今でも使われている。この定義から見れば、本格派推理小説になる一つの欠けない条件は論理的推理ということが言えるだろう。それは探偵役が事件を解決することだけではなく、小説に書かれた手がかりで読者の方も正確に推理できるというのは今の日本評論界の一つの見方である。

さらに、もう一つ欠けない条件は個性のある探偵役の存在だと思う。例えば、日本本格推理の基礎を築いたと言われている江戸川乱歩の作品には、明智小五郎という歩きながら、変に肩を振ったり、興奮すると手でボサボサの髪の毛を掻きまわったりする癖がある探偵が存在している。そして権田万治が「したがって、名探偵の最大の条件は、探偵役としての推理能力の確かさと魅力的な個性であり……」と言ったので、ほかの作品に個性豊かな探偵がまだあるが、共通点は論理的な思考を重んじることだと私も思う。

2 小説に書かれた論理的推理

  

小説で探偵役を担当した湯川学は友人の石神の不自然の変化、事件現場に残った自転車、石神の勤怠表、いなくなったホームレスなどの手がかりで富樫慎二を殺した犯人は花岡親子で、石神はただ彼女たちをかばうために、殺したホームレスの死体で富樫に偽装したという結論を出した。これは探偵役が論理的推理で事件を解決するのに合致したのである。小説にはまず「それにしても湯川はいつまでも若々しいな。俺なんかと大違いだ。髪もどっさりあるし。」という本来なら数学しか考えない石神の一言が湯川を困らせた。さらに石神は弁当屋で花岡靖子と話している工藤を見た時、顔には嫉妬の表情が浮かんでいた。湯川は石神が事件に絡んでいると疑い始めた。そして現場に残った自転車について、湯川は「犯人としては、自転車の持ち主に何としても警察に届けてほしかったんだ。それによって、犯人にとって何か都合のいいことが起きるからだと考えられる。」10と言った。最後、石神の勤怠表から見れば、彼は珍しく3月10日、3月11日の午前2日連続に休みを取ったことがわかって、湯川はすでに結論を出した。石神に殺されたのは彼がよく通っていた新大橋通りに住んでいた「技師」と呼ばれるホームレスだった。小説の最後に花岡靖子の自首はもその結論を証明する一つの理由になる。

また読者の方も手がかりで正確に推理できると思う。花岡親子が富樫慎二を殺したのは読者にとって最初から知っていた事実である。知らされなっかたのはその日付であった。小説から見れば石神が弁当を買った日は本当の富樫が殺害された日で、10日の夜偽の富樫の死体が発見されたが、この日の午前休んでいた石神は弁当を買いに行かなった。矛盾のところを気づいた読者はさらに死体は「手の指は焼かれ、指紋が完全に破壊されていたという。」11を読んだら、自然にこれは死体偽装のトリックだと考え始めるようになるだろう。作者は最初から犯人を知らせることで、これからのストーリに期待し、犯人探せに挑戦してみたいという読者の好奇心を強くさせることができると思う。

3 小説の探偵役

小説に書かれた湯川学という探偵は物理学者で、日常生活でも論理を重視する人である。これは本格派推理小説の探偵が論理的な思考を重んじるという特徴に合うのである。小説には湯川と草薙二人がチェスをするシーンがある。湯川は草薙をからかって「君の論理的思考とはどういうものなのか、一度じっくり分析してみたいね。」12と言った。そして打つ手が思いつかないでチェスのルールを呟い始めた草薙に「そんな屁理屈ばかりいってないで、論理的に戦況を見つめろよ。」13と少し催促した。チェスをするくらい細かいことに対してでも湯川はまず論理で考えることから、読者は湯川がどれだけ論理的な思考を重んじるかをわかるであろう。

そして日常生活であまりことに拘らないところ、必ず実験をして事件を解決するところは個性のある探偵という特徴に合うのである。湯川が愛用したマグカップに関する内容はそれを論証できると思う。小説に書かれたのは「湯川が二つのマグカップをその上に置いた。相変わらず、どちらのカップも奇麗とはいいがたかった。」14だけではなく、「草薙はゆっくり頭を振り、薄汚れたマグカップを持ち上げた。」15というのもあった。このディテールを掴んで、いろいろ書いた東野は生活にあまり拘らない物理学者を書くことに成功した。また、なぜ死者の服を燃やすのかと聞かれた湯川は「数学者と違って、我々は実験をしないと気が済まない性格なんだ。」16と答えた。事件の難点を実験で解決するのは湯川が科学者としての原則であり、探偵としての個性でもある。生活上で拘りがなくて実験を重視してからこそ、湯川はほかの本格探偵推理作品の探偵と区別点があって、個性のある探偵役として成立できるであろう。

ここまで小論はまず本格派推理小説の特徴をまとめた。そして論理的な推理、典型で個性のある探偵湯川学という二点から論証してみて、『容疑者Xの献身』は本格派推理小説の特徴に合うことが論証できる。この上で小論はまた社会派推理小説の特徴に合うと論証してみたいと思う。

三 作品から見た社会派推理小説の特徴

『容疑者Xの献身』は本格小説として中国でも読者に愛読されている。この小説の成功にはまたブームになった理由があると思って、小論は小説に社会派推理小説の特徴が備えることを論証してみる。

1 社会派推理小説の特徴

社会派推理小説は以下の三つの特徴を持っている。一つは、社会性の問題を扱い、リアリティを重視すること。つまり、社会問題に関心を寄せ、現実性を重視することである。

二つは、犯罪動機を重視し、その裏にある人間性を追及すること。社会派推理小説の前の推理作品は普通謎解きを中心で、犯罪動機についてはあまり書かれていない。松本清張等の社会派推理小説では、解かなければならない謎の裏に必ず人間性が含まれている。現実世界でありうる問題、たとえば貧困、金のトラブルなどは一人の人間の犯罪動機になりかねない。清張はこう述べている。「私は、何によらず、動機というものはすべての人間の犯す罪において、一番大事な点ではないかと思っています。」17

三つは、場所の現実可能性であること。社会派推理小説では、人々が暮らしている下町、サラリーマンが働いているビルなどは事件現場になる可能性が極めて高い。

 現実社会における問題への関心

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