言語景観から読み解く多言語化-福州市の三坊七巷を例に

 2022-01-19 11:01

目 次

一 はじめに 1

二 言語景観の広がり 3

三 調査概要 6

四 調査の結果と分析 8

五 おわりに 14

致 谢 18

言語景観から読み解く多言語化

ー福州市の三坊七巷を例にー

刘垚 20141322006

要旨:経済発展につれて、言語の環境も変わりつつある。人に対する配慮が必要であるために、多言語表記は極めて重要である。今回の調査では、調査対象を福州市の代表的な観光地としての三坊七巷にし、文献資料と図表に基づき、多言語化しつつある福州市において、多言語化が言語景観にいかに反映しているか、という問題を検討する。本稿では、現在最も広範囲に使われているいわば「世界共通語」といえる英語は福州市に大きな影響を与えた、ということを明らかにする。さらに、三坊七巷での多言語表示は、福州が多言語化へ促進していることに助けになるということが確認できる。外国語を表記された二か国語、三か国語の共存することからも推定できる。

キーワード:言語景観;中国語;英語;多言語化;福州

一 はじめに

グローバル化の時代を迎えて、世界の都市景観にも変化が見られる。特に言語表記に関して、自国の言語の表記だけではなく、様々な工夫がされた表記物が増えてきている。この背景には、経済活動の活性化に伴う人の移動がある。国を超えて移動する人の中には、現地の言語を十分に理解できない人も多い。特に、海外に観光を主な目的として移動する観光客は、現地の言語を十分に習得していない割合が高い。観光客の誘致が経済的な効果を及ぼすことから、このような言語を十分に習得していない観光客をさらに呼び込むために、様々な工夫をするようになってきた。さらに観光客だけではなく、ビジネス、文化活動などの目的で滞在する人にも、現地の言語を十分に理解しなくても、消費活動を行いやすい環境を整備することで、より多くの消費を促すという効果も期待できる。このように、渡航の目的は多彩であるが、経済活動との密接な関係に基づいて現地を訪れる人が増え、その中には現地の言葉の理解が十分でない人も多くなってきたために、このような人に対する配慮が必要になってきたと言えよう。

近年、中国の経済は目覚ましい発展を成し遂げてきた。その主な原因として計画経済から市場経済への体制移行により、また、国家政策としての市場開放の推進をはじめとして、国際経済システムへの積極的な参加など、経済システムの国際化が着実に進展したことが挙げられる。対外依存型の経済発展を優先させて、国内市場の開拓が進んでいるという面があり、国家主導でのプロジェクトとして、特定の地域を優先させる。

こうして、観光業はその国にとっても重要な経済を潤す産業の一つとなっている。そのため、今よりさらに多くの人が国に訪れる環境を整えなければならない。たとえば、バスや地下鉄などの交通機関に乗りやすい環境を作って、大型のショッピングモールなどでも多言語のパンフレットを用意するなどの様々な課題がある。

福州市は2015年8月30日に「福州新区」に指定された福建省の省都として経済発展が著しい。また、2015年10月18日に第一回全国青年運動会が福州市で行なわれていたため、政策的に多言語表記が行われてきている。それをきっかけで、市民と観光客の利便性の高い多言語表記ということを期待している。

しかしながら、福州市の多言語表記に関する研究は少なかった。黄観宇(2011)は福州市にあるショッピングモールにおける言語の使用状況を調査した。都市化において、中国語と福州語を中心とした言語の環境下、日常生活では人々はどの言語を選んで、使うかということを明らかにした。さらに、その言語コードを選んだ理由も報告した。しかし、多言語化において、福州市の多言語表示はいかに福州市の案内板に反映しているかについて触れることができなかった。

そのため、今回の調査では、調査対象を福州市の代表的な観光地としての三坊七巷にし、文献資料と図表に基づき、三坊七巷での多言語表示の使用実態を検討したい。

二 言語景観の広がり

(一)言語景観の定義について

  街路の看板や張り紙に書かれた文字・言語が作り出す景観は言語景観と呼ばれ、言語学分野だけでなく、地理学、社会学など社会科学の諸分野で調査・研究が行われてきた。バックハウス・ペート(2005)によると、言語景観という概念は一般的に「道路標識、広告看板、地名表示、店名表示、官庁の標識などに含まれる可視的な言語の総体」と定義される。現在の言語景観の研究分野は、公共圏に掲示された書かれたものの研究である。

また、ロング・ダニエル(2010)では、言語景観について、次のような4つの特徴を持って説明している。「①文字言語であり、話し言葉ではない。②公的な場に見られる文字言語であり、私的なコミュニケーションではない。③不特定多数の読み手には発される者であり、特定個人宛に書かれたものではい。④受動的に視野に入るものであり、意図的に読まなければならないものではない。」

本稿では、「言語景観」はロングの定義に従うものであり、言語景観は国内外を問わず、国際化や外国人旅行者による多言語化が進む地域において今日の言語景観の特徴を表しているものであると捉える。

近年、日本は国際化の一環として外国人旅行者の受入を積極的に行っていて、同時に外国人移民などによる多民族化も進んでいる。日本の社会言語研究ではこうした状況に注目し、その状況を捉えるための手掛かりとして、多言語表示を含む言語景観のことを取りあげてきた(田中ゆかり2009、庄司博史2009、金美善2005など)。

しかしながら、尚国文、赵守輝(2014)は中国では、街路の看板や広告看板、店名表示、ポスターや張り紙に書かれた文字・言語について検討する学者が大勢いって、言語の規範性、文化、修辞学及び外国語翻訳の誤りといった面に重点を置いていると指摘している。

すなわち、言語景観における言語の優先順位を指摘する人は多くない。しかし、そのものこそが国際化において言語景観の研究すべき課題となっていると考えられる。

そのため、日本の言語景観の方法に基づき、本調査を行われた。

(二)日本における言語景観の研究

日本における過去の言語景観の研究では、日本の欧米化、国際化、多民族化という視点から様々な例がなされてきた。

まず、庄司博史(2009)は、日本社会の多民族化、グローバル化過程の一現象として都市の多言語景観について報告する。また、金美善(2009)は、コリアン集住地域の韓国語・ハングル景観について考察する。新宿のようなニューカマーが集住するところではハングル景観が広がるのに対して、大阪府生野区のようなオールドカマー集住地域では近年までそうではなかったという。その要因として、コリアンの来日時期や世代によって、使用言語やホスト社会に対する意識が異なることを指摘する。コリアンの存在が言語景観に反映される場合と反映されない場合の対比も指摘した。次に、日本におけるハングル表示増加の理由として、多民族化、韓国からの旅行者の増加、「韓流」と称される韓国ブームの3つを挙げる。

磯野英治、上仲淳(2014)は外国人観光客の多い都市の道頓堀地区に注目し、民間の店舗がどのように外国人観光客に向けた言語的なサービスを行っているのかについて言語景観の調査を行った。、外国人観光客の観光が一層楽しいものとなるために、店舗での言語景観は基本的に四言語併記で、外国人観光客の目に留まりやすいよう大きく書かれていることを主張した。さらに、道頓堀の民間表示には日本語・英語 ・中国語 ・韓国語といった基本的な四言語併記の多言語景観だけではなく、フランス語やタイ語を加えた多言語景観が観察され、さらに外国語の単独表記も多く目にすることができたということを述べた。

(三)中国における言語景観の研究

まず、李貽(2011)が、広東省の省都の広州市にある北京ロードの私的の言語景観について、「中国語とアルファベット」というような複合表記に特徴がある。それについて簡単な調査と分析を行った。グローバル化に伴い、北京ロードの言語景観も進んているということを主張している。

また、孙蓮華、谷月(2012)は日本の横浜市にある中華街と中国の上海にある黄浦区の飲食店の店名表示の比較を通して、その店名表示のシラブル、通り名、専用の語彙の特徴及びこの三者と料理のかかわりから日本語の言語景観において漢字表記の特徴とその要因を述べた。

さらに、王暁蕾(2017)は合肥における言語景観の翻訳の誤りを問題としている。中国語の対訳としての英語では、誤ったところを指摘している。その上、英語についての翻訳の面から対策を挙げる。たとえば、中国語では「路」という単語を訳す場合、二種類が分けられる。簡単に中国のピンイン「RU」と英語の「ROAD」と訳すことであると述べた。

このようにして、中国の言語景観における分析方法は簡単すぎ、分析過程も大まかであり、言語景観の「インフォメーション機能」に重点を置いていて、翻訳の誤りを焦点にしたといった面に重視している。即ち、言語景観における「象徴機能」の優先順位を指摘する研究は多くない。また、中国にも近年、国際化や外国人の増加による多言語多文化の状況が進んでおり、それに伴って街中の言語景観も変わりつつある。

特に、本稿で取りあげる三坊七巷のような観光地の場合、「清新福建」という観光政策を実施するうえで、大人気なスポットとなっている。中国人だけでなく、外国人観光客も増えてきた。

以下では、福州市における言語景観の事例を、特に本研究の目的となる観光地域の三坊七巷での言語景観を中心に概観し、多言語化における多言語表記の形成と要因について述べたい。

三 調査概要

(一)福州と三坊七巷について

 データの採集場所は福州市である。福州市は中華人民共和国福建省の省都である。榕城(ようじょう)とも称される歴史の古い町で、国家歴史文化名城に指定されている。三坊七巷は福州市の南後街の両側から、北から南まで排列された十条坊巷の略称で、都市センタに位置していて、昔の町並みを模倣した観光施設である。

三坊七巷とは、中国福建省福州市の中心部にある南後街両脇に南北に順に並ぶ10巷をいう。東は八一七北路、西は通湖路、北は楊橋路は隣して、南は吉庇路、光禄坊に達し、40ヘクタールある。西に向かう3つの「坊」(門がついた閉じられた通り)と、東に向かう7筋の「巷」(門がない開いた路地や横町)からなり、三坊は北から順に衣綿坊、光禄坊、文儒坊、七巷は楊僑巷、郎官巷、黄巷、安民巷、宮巷、塔巷、吉庇巷。2010年第1回「中国歴史文化名街」の1つに選定される。中国の10大「中国歴史文化名街」の一つに当たる歴史文化街区で、歴史文化街区としては最大の面積を誇る。

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