夏目漱石の小説におけるインテリ像--「心」と「三四郎」を中心に

 2022-01-19 11:01

目 次

一 はじめに 1

二 先行研究 2

三 「先生」と「原口さん」への対照分析 3

四 夏目漱石の作品におけるインテリ像 4

五 おわりに 9

致谢 13

夏目漱石の小説におけるインテリ像

――『心』と『三四郎』を中心に

包红红 20141322023

要旨:夏目漱石は日本の国民作家として、多くの名作を生み出した。作家本人やその作品に対する研究も盛んに行われてきた。『こころ』と『三四郎』は夏目漱石の代表的な作品として、リアルで繊細な心理描写を通して、明治時代のインテリの迷い、个人主義思想を描き出した。 本稿では、文献研究法を取り入れ、『こころ』の主人公である「先生」と『三四郎』の「原口さん」への分析を通して、夏目漱石の作品におけるインテリ像を論じてみた。夏目漱石の作品に登場するインテリは偽善者である一面を持ち、一方、心は孤独に満ちており、現実に対して妥協や逃避の道を選ぶのが特徴である。それは明治社会の複雑な状況、夏目漱石自身の経験や思想などによるものだと考えられる。

キーワード:インテリ;『こころ』;『三四郎』;偽善;逃避

一 はじめに

夏目漱石は近代日本を代表する小説家で、国民作家と呼ばれている。彼は様々な典型的な人物像を描くことで社会現実を反映し、現実の生活における低俗で、醜悪な現象に対して厳しく批判した。『こころ』は大正3年( 1914年) 4月に発表され、夏目漱石の後期の代表作の一つである。『こころ』では、主に「先生」とkと家主の娘の3人の仲間の葛藤が描かれている。先生とKは親友で、二人とも家主の娘が好きになってしまったが、いろいろあって、結局先生はkを裏切ってその娘と結婚してしまった。すべての真実を知ったkが自殺した。それで罪を負うことになった先生はついに自殺の道を選んだ。『三四郎』は夏目漱石の『三部曲』の最初の序曲で、漱石文学の中で最も優れた青春小説と言われている。田舎出身の主人公の三四郎が東京の大学に通っていた時の見聞が描かれている。「原口さん」は外国から留学してきた画家で、三四郎とは共通の友達がいて、三四郎の目ではファッションを求める紳士のような人物である。「先生」と「原口さん」は夏目漱石の作品における明治時代のインテリの典型であり、インテリ像の特徴的なものが見られる。

本稿では、『こころ』の先生」と『三四郎』の「原口さん」への分析を通して、夏目漱石の作品におけるインテリ像を論じてみたい。

二 先行研究

日本では、夏目漱石が国民の大作家としての影響が大きい。「夏目漱石の文章は音楽性に富んでいると思います。今は読んでみると、なかなか貴重な傑作です」1と村上春樹は高く評価している。近年、夏目漱石に関する研究が盛んに行われている。筑摩本屋は1973年に『夏目漱石全集』を出版した。夏目漱石が書いた人物や作品については、社会的観点、性的観点、心理的観点からも多く研究されている。例えば、清水美知子はその論文『夏目漱石の小説にみる女中像 : 『吾輩は猫である』『坊っちゃん』を中心にして』では夏目漱石の『吾輩は猫である』と『坊っちゃん』の二つの作品を中心に、女性のイメージなどについて検討した。 新見公康は『夏目漱石の『こころ』関係の生成』という論文では、時間を中心に、「私」、先生、kがさまざまな時期に出会った目的を分析した。

中国では、夏目漱石の作品について翻訳が30余りにも至る。夏目漱石の思想は中国文学の近代化にも大きな影響を及ぼし、夏目漱石の思想と作品に対する研究は比較的多い。 2007年、李光貞は『夏目漱石研究』を出版し、夏目漱石文学の発展成果を紹介した。また、臧運髪は『夏目漱石早期思想解析』という論文で夏目漱石の漢学修養と自己本位思想を分析した。曹志明はその論文『夏目漱石的“明治精神”再論夏目漱石『こころ』中“先生”之死』の中で、『こころ』を中心に、先生の自殺の原因を分析した。

本稿では、社会的観点や心理的観点から『こころ』の「先生」と『三四郎』の「原口さん」の人物像を分析している。そこから、夏目漱石の作品に登場するインテリ像の特徴を論じみようと考える。

三 「先生」と「原口さん」への対照分析

『こころ』の「先生」と『三四郎』の「原口さん」はいずれも夏目漱石の作品の中で明治時代のインテリの代表者である。『こころ』の「先生」は利己主義者で、学識を持っているが、叔父の醜い姿を目の当たりにして、すべての人を嫌うようになった。その後、自分の裏切りで親友Kの自殺を招いたことで良心が責められ、自殺を選んだ。『三四郎』の「原口さん」は外国への留学経験のある画家で、三四郎からみればいつもファッションを追い求める新風画家である。二人の性格とイメージは大きな違いがあるが、インテリ像として共通したところを持っている。次は、この二人の人物の性格、人間関係や生活に対する態度などについて対照的に論じてみよう。

1 孤独の先生と交際の名人の原口さん

叔父に骗された後「先生」が信頼していた精神世界が崩れ始めた。叔父に騙されたことが先生への打撃が大きい。この打撃は、先生の考えや行動にも大きな変化をもたらした。先生は、他の人との付き合いの中で、自分が孤独な人だと率直に言っている。先生の友達は少なく、kが死んだ後先生の生活はほとんど罪悪感に苦しんている。先生は他人に対する態度は、初対面の時にも、深い付き合いがあっても、いつものように、千里以外には冷淡な感じを与えている。遺書を友達に渡した先生は遺書の中で初めて自分の過去を語った。それまでは、心が完全に閉鎖されている。先生の心の中の孤独を見ることができる。

それに対して、原口さんは海外留学の経験のある画家で、三四郎の目から見れば外国から来た紳士である。原口さんは交際が上手で、様々の名士と交流している。彼は大学教授、文学者や芸術家などを招待する会を開き、自分の交際を広げようと考える。

先生はKに対する罪悪感に苦しんでいたが、すべての事や考えを内心に隠して自分を閉じる。孤独で自分を罰するといえる。逆に原口さんは、他人との交際のチャンスを見逃さず、交際の達人と呼ばれている。原口さんと対照的に、さらに先生の心の孤独を表している。

2 消極的なの先生と積極的な原口さん

先生は博学で知恵のある人である。 しかし、彼は叔父に騙されるのことために周りの人々を信頼していないて社会が嫌い。また、自分の裏切りでKの自殺を選らんだ。その後、先生はkに対する罪悪感の中で生きている。彼は仕事に行かず、人と付き合うこともしない。一方、先生は他人を信じず、自分を信じない。先生は博学の多才で、彼の認識の中で自分は社会に奉仕する資格がないと思っている。だから先生の人生はなにもできないといえる。

『三四郎』の原口さんは西洋思想を受け入れながら、日本の本土文化を愛している。 同時に、彼はファッションとトレンドを追求して、美しさに独自の洞察力を持っている。 彼は新時代の女性美禰子と美を追求するという観点で合致した。そこで、原口さんは美禰子をモデルに『森の女』の画像を完成させた。そして、原口さんは集まりを行い、絵の展覧会を開き、 新しい風潮の画家としての地位を築いた。

先生は博学ではあるが、自分の罪悪感で仕事や社会に触れない。逆に原口さんは生活ではたくさんの人友達になった。また、彼は仕事に対する積極的な態度がうかがえる。先生は社会に対する消極的な態度とは対照的に、原口さんは新潮画家になって芸術界に新しい風潮をもたらした。

3 インテリとしての共通点

先生と原口さんは夏目漱石の二つの作品でイメージの異なるインテリで、性格などは大きな違いがあるが、インテリとして共通したところを持っている。先生と原口さんとは最大の類似性は、思想や行動の中で自分を偽ってうわべでよいことをしているように装うということ、つまり偽善の一面を持っているのである。明治時代のインテリとして、博学多才であるが、しかし、自分の幸せを求めるとなると、完全に自分を中心にして、周囲の人の利益を無視する。先生は自分の利益に関わらないkを助けてあげたが、しかし、三人との感情の葛藤で先生は自分の利益を優先し、kを裏切ったのである。一方、交際の達人である原口さんは好きな女性の美禰子に触れる機会を増やそうと考え、美禰子のそばに近づいた。最後に彼の恋は失敗に終わったが、多くの利益を得た。そして、紛争や矛盾、困惑に直面するとき、正面から立ち向かうのではなく、しばしば逃げる姿勢をとること、それから、なにかこだわりを持って、自分の原則などをきちんと守ることなど共通したところが多くみられる。それはすべて夏目漱石が描いたインテリ像の特徴的なものの表れだと言えよう。

四 夏目漱石の作品におけるインテリ像

  1.  夏目漱石の作品におけるインテリ像の特徴

『こころ』『三四郎』は夏目漱石の代表的な作品として異なるインテリを形作った。次は、その作品に登場するインテリの人物像の特徴をまとめてみたい。

    1.  明治時代の偽善者

明治時代のインテリは社会の急激な変化の下で、思想的にも急激に変化した。その結果、多くの邪悪な紳士が現れた。うわべはよいことをしているが、自分の利益のためという思惑でやっているというのがそのような人物の特徴である。先生と原口さんは確かにその代表である。『こころ』の先生は、kがジレンマに陥っているときに助けてあげた。三人との感情の葛藤でkを裏切った。要するに、先生は自分の利益に関わらない状態でkを助けてあげたが、一方、三人との感情の葛藤で先生は自分の利益を選んでkを裏切ったのである。先生がkに対する態度は偽善だといえる。これは、先生の悪のイメージを実に表している。そして 美禰子は『三四郎』の中で新時代の女性である。原口さんは美禰子に対し好意を持っている。すると、彼は美禰子の周りの人に近づき、友達づくりを実行した。実はその目的は美禰子の周りに現れた彼と同じような気持ちを持っている人を見張るためである。原口さんはそういう思惑でその人たちと交際している。その行為や言葉には偽善が満ちていた。また、彼がよく文化交流などといった名目で集まりの会を開いたが、実はそれも自分の影響力を広めることに目的があったのである。だから、原口さんも偽善者である。

また、偽善者のイメージは夏目漱石の作品のほかのインテリからも見ることができる。恋の三部作の一つである『それから』の代助が若かった時、彼は一切にたいするの態度に消極的だった。恋人としての三千代を友達に譲った。その後、自分の友達を裏切って困った三千代を妻にした。だから、これらのインテリは自分の利益や道義に直面している時、行動においては自分の利益を選んだ。夏目漱石に書いたインテリは偽善者の特徴を持っているといえる。

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